ガラスの冠

休日のとある日、マクワのもとに荷物が届いた。何十にも縛られた段ボールの箱を開け、大きな箱から出てきたのは、うっとりするほど輝きを放つ大きな硝子の冠。
白い手袋をはめて、セキタンザンの頭に降ろすとマクワは笑った。

「パルデア地方にテラスタルというものがあるそうです。ポケモンを輝かせ、タイプを変えてしまう力があるとか。それをイメージして作ったアクセサリーです」

なるほど、不思議なくらい頭にぴったりはまっているのは、わざわざサイズを合わせてあるからだろうか。セキタンザンは嬉しくなって鳴いてみせた。
テラスタルの映像は、この間マクワと一緒に見ている。自分と同じセキタンザンが、なんと水タイプになって、水の技を使っていた。
自分もやってみたい、そう考えたセキタンザンは、窓を開けると、ベランダに向かって水タイプの技をイメージして身体から水を浴びせる。ぴちゃん、出てきたのは油の塊。

「……タールショット? ふふ、相手のタイプを変えてどうするのですか」
「シュオ」
「ううん、まあ、本物はそのうち……パルデアへ行った時に、挑戦してみましょう」
「シュポオ!」

でも確か。セキタンザンは思い返す。自分はやり方を知らないが、セキタンザンによっては水の扱いを知っているセキタンザンもいた気がする。いつか使ってみたいと思った。
部屋に戻って、自分の頭でキラキラ光彩を放つ冠を外し、改めて自分自身で見る。繊細で美しい。

「ああ、セキタンザン……もう外してしまいましたか……。まだ撮影すらしていないのに……」

しょんぼりと肩を落とすマクワの頭に、硝子の飾りを被せた。
少し大きくて斜めにずれてしまったが、白金の頭の上で輝く透き通る硝子を見たセキタンザンの眼がちかちかと光を放った。

「ボオ!」
「ぼく……ですか? サイズ合わないと思いますが……」
「シュポオ」
「ま、まあ……当然似合いますよね。ああでも……写真をSNSにあげたら、ファンの方も喜んでくれるでしょうか」
「シュポオ!」
「きみ、やけに力が入ってますね。せっかくですから……両方撮りましょう。……もう一つ作ればよかったかな」